表具(ひょうぐ)
 裂地(布)や紙などを張ることによって仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖などを総じて呼びます。また「(掛軸などを)仕立てる技能」を指して言う場合もあります。他に「仕立てること」を表装(ひょうそう)と呼ぶ場合もあります。
 この技能を有し、生業としている職人を、表具師(ひょうぐし)または経師(きょうじ)と呼びます。仏教伝来とともに中国より伝わり、当時は仏典の経巻(きょうかん)や礼拝用の仏画を仕立てることが始まりで、各地方への仏教の普及と茶道の興隆と同時に発展をし、城下町の栄えた地域では「京表具」、「江戸表具」、「金沢表具」、「伊勢表具」などと称するように、各地域で作風が確立されるようになっていきました。各地域の表具の特色を大まか挙げるなら、裂地の配色、仕上がり寸法にあらわれています。
 現代の表具師の主な仕事内容には、過去に掛軸や屏風などに仕立てられた文化財や美術品の修理補修をはじめ、襖の新調、張替、障子貼りなども含まれています。

襖(ふすま)
 日本家屋の特徴の1つで「間仕切り」として利用する建具の1種です。
襖の内部構造は、障子のように組んだ骨(木)のものを在来型とし、その他に近年の大量生産に対応するために、ダンボール芯や発泡プラスチックを使用したものがあります。ダンボール芯は関東が主流で、発泡プラスチックは関西を中心に利用されています。
 紙と糊と木で構成されている襖は、障子と同様、何度も張替ができるのが特徴の1つです。その他に間仕切り以外の機能として、室内の湿度が高くなると湿気を吸収し、湿度が低くなれば湿気を放出して、湿度調整を自然に行います。デザインによっては、障子紙を通した柔らかい光を室内に採り込むこともできます。
 襖には、襖紙の種類や特性、価格に適した工法があります。材料の特性を活かし、部屋に趣を持たせる技が表具師にはあります。

内装(ないそう)
 戦後、東京五輪をきっかけとした高度経済成長期の中、一般住宅へのニーズが多様化していきました。表具屋、経師屋の職人は、外仕事として天井や壁のクロス張りを中心に、カーテンやブラインドの取付といったインテリア工事全般を請負うようになりました。世代交代をしていく過程で、仕事内容を内装へ比重を置くように変化した表具屋、経師屋も少なくありません。
 昨今では、消臭機能や火災時の燃焼速度を遅らせる事で避難路の確保を可能にする機能性壁紙から、和紙や織物を使用した高級壁紙、独自の空間を演出するためのデジタルプリント壁紙など、内装分野は変化に暇がありません。また機能性壁紙の中には、
同じ間取りでも壁紙が変わるだけで、雰囲気は一変します。現代の日本社会においては、くらしに身近な分野となっています。